数年前、私の家の隣に引っ越してきたおじいちゃん(85)とおばあちゃん(82)の物語です。
おばあちゃんは認知症を患っていて、おばあちゃんの身の回りのお世話は、おじいちゃんが1人でちゃきちゃきこなしています。
おじいちゃんはいつも身綺麗にしていて、近所のスーパーではなく、自転車で20分はかかる商店街へお買い物に行き、しばしば私に「美味しそうなミカンが売ってたから」と言って、果物なんかを持って来てくれます。
私はそのお返しに、おかずを多めに作って、おじいちゃんに持って行ったりして、仲良くしていました。
私「おじいちゃん、家の掃除に洗濯、ごはんの用意、おばあちゃんのオムツ替えまで、全部1人でやってて大変じゃない?家族はいてないの?」
おじいちゃん「息子が1人居てるけど、いっこも顔出さへんわ!嫁の尻に敷かれてしもてて、アカンねん。あの嫁の子やから、孫もそんなに可愛くないしな~!ばあさんの面倒くらい余裕やで。ワシは昔、ばあさんにもっと大変な苦労をかけてしまってるから…罪滅ぼしみたいなもんなんや~」
私「そっか。しんどいときはいつでも声かけてや」
おじいちゃん「ありがとうなー」
おじいちゃんの息子家族、ほんまに1回も訪ねて来てないよなぁ…
まぁ、他人事なんだけどね。
そんなある日、おじいちゃんが封筒を持って来て、私に言いました。
「昨日、車を買い替えるってお父ちゃんと話してたやろ?ワシ聞こえてん。このカネを使ったらいいわ」
封筒には現金が300万円も入っていたから、私はびっくり!
「おじいちゃん、何言うてんの!そんなん要らん!おじいちゃんの大事なおカネやねんから、ちゃんと持っとき!でも、家にこんな大金を置いてたらアカンで!ちゃんと銀行に預けとくんやで?分かった?」
この時はすんなりと引き下がってくれたんですが…
またまたある日のこと。
おじいちゃん「これ、ワシの全財産やねん。通帳とハンコ、どっか行ったらアカンから、預かっといて欲しいねん。カネが必要な時はここから出して使ってくれたらいいから」
私「またそんなこと言うて!私そんなん預らへんで!おじいちゃん、ちょっと待っといて!」
と、家にあった小さなポーチをおじいちゃんに渡して…
私「ほら、これに全部入れといたら無くさへんから大丈夫!このポーチを、泥棒が来ても分からんような所に隠しといたら大丈夫やから!」
おじいちゃんは渋々諦めて、通帳類を持ち帰ってくれました。