・ご飯を食べたのに「食べてない!」と言う
・家にいるのに「家に帰る!」と言い出す
・「財布を返せ!」と怒りだす
「認知症あるある」です。
親にこんなことを言われると、「なんで??どうしたらいいの?」って思いますよね。
これ、認知症の高齢者側も同じなんです。
自分が知らないこと、分からないことに出くわすと、どうしたらいいか分からないですよね。
私達からすれば理解不能な言動でも、本人からするとちゃんとした理由があり、それをうまく表現できないだけ、だったりします。
認知症だからといって、問題行動の原因を探ることをしないのか、それとも、他の原因があることを探って問題行動を終わらせようとするのか。
この差は大きいです。
とは言え、ド素人である我々に、「問題行動の原因を探れ!」と言われても難しいですよね。
ということで、ある介護のプロのお話が参考になりそうです。
アルツハイマー型認知症の女性、Aさんは、骨折して入院したことをきっかけに、オムツで生活することになりました。
ある時から、オムツに手を入れ、汚れた手で周りを触ってしまいます。
手に便が付いているのに、壁や床にこすりつけたり、自分が着ている服で拭いたりする行為を、「弄便(ろうべん)」といいます。
認知症の行動の一つです。
家族からすれば、「自分の便をそこら中に塗りたくってしまうなんて…認知症を発症すると『子供に返っていく』なんて聞くけど、これはあんまりだわ…」と、落胆してしまいます。
弄便は家族にとって最もショッキングな行為ですので、Aさんに関わる介護職員たちは、一生懸命に原因を探ります。
Aさんを注意深く観察していると、オムツを交換したら暫くは触らなくなるので、弄便は「早く交換してほしいというサイン」かもしれない、という意見が出ました。
更に、腰の辺りを掻くような動きがみられることもあったので、痒みの原因を探ることにしました。
オムツの材質?
腰周りのゴムの締め付け?
結論は、使っていたボディーソープ体質に合わなかったので、痒くなっていたのです。
Aさんは、痒いということを上手く伝えられず、自分で痒さをなんとかすることもできず、その結果弄便という行動に繋がってしまっていたんです。
ボディーソープを石鹸に変えたら、痒くなくなり、オムツを触らなくなって弄便はなくなりました。
90歳になるBさんは、ほぼ寝たきり状態で、1日の殆どをベッドの上で過ごしていました。
訪問介護サービスと訪問看護サービスを利用して、娘の家族と一緒に自宅で静かに過ごしていました。
普段はとても穏やかなBさんなんですが、困ったことがありました。
それは、オムツ交換のときにヘルパーを引っ掻いたり、つねったりすることです。
オムツを交換するときは「オムツを変えますね」と声をかけて、「はい」と返事があってから交換しているので、オムツ交換を嫌がってるわけでもないんです。
でも、いざ交換し始めると「何してるの!やめて!」と叫び出して、ヘルパーの腕を叩いたり引っ掻いたりするんです。
どこかに痛みがある?
恥ずかしい?
ヒントは訪問マッサージにありました。
マッサージをしているときにも、似たようなことが起きていたのです。
「マッサージしますね」と伝えると「はい」と返事をしてくれるんですが、しばらくすると「何してるの!」と叫ぶそうです。
「足のマッサージをしていますよ」と伝えると穏やかになる。
またしばらくすると「何してるの!」と来るので「足のマッサージをしていますよ」と伝えると落ち着くとのこと。
結論は、1分前の説明を忘れてしまう、ということでした。
それからは、オムツ交換の実況中継をするようにしたところ、Bさんの暴力は治まりました。
オムツが痒くて、自分で何とかしようとした行為が弄便になってしまったAさん。
短期記憶がなくなってしまったため、今から何をされるのか分からない恐怖を感じていたBさん。
ちゃんとした理由があったんですね。