そんなバナナ

認知症

これは、ある高齢夫婦に起きたことです。

 

Sさんは85歳、妻のRさんは83歳で、子供はなく、夫婦2人で持ち家に住んでいました。

Sさんは5年ほど前に脳梗塞で倒れ、下半身に麻痺が残っているため要介護認定を受けていて、自宅でリハビリを行う等の「介護サービス」を受けていました。

 

2人の収入は年金のみで、Sさんが15万円、Rさんが5万円ほどで、まだ自分で動けるRさんが銀行へ行ったり、近くのスーパーに買い物に行ったりして、自宅での生活を維持していました。

 

ある日、SさんのケアマネージャーがRさんに「Sさんの介護度だったら、〇〇というサービスが使えるので使いましょう」と提案したんです。

Rさんはおカネのことが心配で、「今のままで困ったことはないし、サービスが増えたら自己負担の費用も増えてしまうから必要ありません」と答えました。

 

Sさんのケアマネージャーは、「Sさんの介護度であれば、まだ使えるサービスがあるのに、妻のRさんが断るんです」と、地域包括支援センターに相談しました。

 

地域包括支援センターは、SさんとRさんの住む市役所の介護福祉課と、どう対応すべきかの協議を行いました。

 

その結果、妻であるRさんを、介護放棄を理由に「虐待認定」したんです…

 

市は、Sさんを虐待しているRさんから引き離すために、「リハビリ施設の見学に行きましょう」と言ってSさんを連れ出し、そのまま介護施設に一時保護しました。

 

その間に、市長がSさんに成年後見人を付ける申し立てを行いましたが、Sさんが混乱するといけないので、成年後見人がつくことは説明しませんでした。

 

その結果、面識もない司法書士がSさんの成年後見人になりました。

 

成年後見人は、法が定めた権限を使って、銀行に対してSさん名義の通帳の再発行を請求し、成年後見人がSさんの通帳を管理することになったので、RさんはSさんのおカネを引き出すことが出来なくなったんです。

更にSさんは、成年後見人が契約した「有料老人ホーム」に移り住むことになりました。

 

Sさんが老人ホームに入居すると、市は「Rさんの介護放棄の実態がなくなった」という理由で虐待認定を終わらせ、それと同時にRさんへの関与もしなくなりました。

 

自宅に1人残されたRさん。

 

今までは夫婦2人分の年金を使って生活していたのに、夫がいなくなったので、自分の年金だけで生活することに…

持ち家なので家賃はかからないといっても、Rさんの年金5万円だけでは生活費が足りません。

 

案の定、2か月も経たないうちに、Rさんの生活は一気に苦しくなってしまいました…

 

成年後見制度の誤った運用のせいで、SさんRさん夫妻は、望まない別居生活を強いられる結果になった事例です。

 

・介護サービスの利用を断っただけで虐待認定されるの?

・市長が市民に対して成年後見人をつける申し立てができるの?

・Sさんに成年後見人をつける時や、施設へ入所する時、家族であるRさんの同意は要らないの?

 

こんな疑問が湧いてきますよね…